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「めまぐるしいですね。自分のなかで混乱してしまわないように、フローチャートをつくって、1つひとつの工程を、印鑑を押しながら確実に進めます。もれてしまうと大変なことになりますので、ここは手作業が大事。納期管理はとくにしっかりやるようにしています」 ときにはまったくわからない専門用語が出てくることも。 「医療関係で、日本語でも聞いたことのないような病気の調査をしたことがあります。自分ではどうしようもないことにぶち当たったときは、プロにお願いします。この場合は、医療翻訳者を探しました。自分の能力を高めることも大事ですが、そういうプロをちゃんと使えるよう、人脈を広げることも大切だとつねづね言われています」 お国柄によって調査がうまくいかないこともある。 「当局からの許可がおりないという理由で、中国でセッティングした電話インタビューがキャンセルになったり、中東でのネーミング調査で、依頼した現地のネイティヴがのんびりしていて返事がこなかったり。そういうときは、お客様と一緒になって別の方法を考えて、協力しながらやるようなところもあります」
世界に関わりたくて
世界各国とのやりとりが発生し、英語での文書作成やメールは必須。突然外国語の電話がかかってくることも。社員のほとんどは海外経験があり、英語はもちろん、さらにほかの言語に精通している人が多いのだそう。隠善さんは大学時代にワーキングホリデーでイギリスに半年間滞在。英語を聴きとる耳はそのときに培ったが、入社してすぐに悔しい思いをする。 「最初は電話取りが仕事だったんですが、ある日北京からすごくなまりのある英語でかかってきて。なにを言ってるかわからないし、向こうもこっちの話を聞いてくれなくて、結局もっと英語ができる人にお願いしてしまったんです。いまはもう慣れましたが、電話応対がいちばんの壁でした。基本的なフレーズはちゃんと言えるよう、机の前に貼ったりして、全部頭に入れました。じつは面接のときに英語力が足りないと言われたんですが、頑張りますので、ということで入社させてもらったんです。いまもTOEICのスコアを提出しなきゃいけなくて。会社側から出されている目標は900点以上なんですが、まだまだです」 通勤時間にはiPodに入れたTOEICのCDやBBCのラジオを聞いて、日々勉強を続けている。 大学で国際協力を専攻していた隠善さんが、卒業後に自衛隊に入ったのは、「世界に関わっていきたい」という思いがあったからだそう。 「若くないとできないことに挑戦してみたい、というのもありました。もともと2年で辞めて青年海外協力隊に行きたかったんです。でも二次試験で落ちてしまって」 これからどうしようと思っていたときに、自衛隊員の就職支援をしている団体に紹介してもらったのがWIPだった。 「学生時代にボランティアにもいろいろ顔を出していたのですが、やればやるほど、結局お金にならないじゃないですか。文化的な交流が大事とか、いくらきれいなことを言っても、それだけでは成り立たない。それが、事業として成り立っているところにすごく魅力を感じたんです」 それまで国際調査という仕事があることすら知らなかったという隠善さん。 「自衛隊ではモールス信号を打つ仕事をしていて、この業界は未知の世界。入社してからマーケティングの本をたくさん渡されて、感想文を宿題のように毎週提出していました」
形にならない、
「ものができ上がるわけではないので、どんな形態になっても、それで納品になってしまう。それだけに、質を上げることが大事だな、と責任を感じています」 調査の仕事は、世の中になにかが出回る以前の準備段階をサポートすること。納品したあと、その調査結果によってどうなったのか、なにが起こったのか、というところまではわからない。 「形には残らないし、日々案件に追われて、こういう瞬間がささやかな喜び、とかはあまり考えたことがないですね。唯一形になった、ベトナムの記事が載った雑誌は大切にとっていますけど」 しかし、もっと根本的なところで、日々この仕事に大きなやりがいを感じているそう。 「時代を後追いしているのではない、というのがおもしろいですね。時代を読むような感覚が必要とされる。以前、大手広告会社をとおして、日本の嗜好品をロシア・韓国・台湾に打ち出すという案件に携わったのですが、現地で流行っているものはなにか、どんなファッションなのか、アウトドアはなにが人気かとか、あらゆる方面から調査して、どういう打ち出し方をするのかというお手伝いをしたんです。金額的にも大規模なプロジェクトだったと思います。この仕事すべてに通じることですが、大きな時代の流れのなかで、なにかが始まることをサポートしている、ということにやりがいを感じます。世の中ってこうやってできていくんだ、って思ったんです」 日本企業の海外進出をサポートしたい、と考えて入社した隠善さんの夢は、その実現を目にすること。 「あるデパートのアジア進出のための調査をしたことがあるんですが、いつかその国に行ったとき出店されてたら、わあ、ほんとにきてる! って思えるかなと。いまはまだ先輩や上司のサポート的な役割が多いですが、調査メニューを熟知して、自分でお客さんに最適な提案ができるようになりたい。そうですねえ、3年くらいはかかる気がします」
愛用グッズ官公庁の調査案件を引き受けることも多い。「内閣府や防衛省、外務省、郵政公社などには、会社がある麹町からよく自転車で行きます」 「クライアントとの打ち合わせで細かい要望を書きとるため、万年筆を愛用しています」。社長がこだわって使っていたことから、社員に広まったのだとか。 日本語と外国語を見比べながら作業しやすいよう、パソコンのモニターは机に2台ずつ。「ショートカットキーをはじめ、パソコン操作は最初に徹底的に覚えさせられました」
海外マーケティングリサーチスタッフの働き方隠善さんの会社では、時差のある外国とのやりとりが多いこともあり、朝礼のある10時に出勤していればよいフレックス制を導入している。「お昼休みも決まっていなくて、きりのいいところで自由に取ります。忙しいときは、気づくと5時、ということも。帰りはだいたい8時は過ぎますね」。年収は300〜400万円くらいから。「もちろん会社の業績や経験によって変わる」と隠善さん。国内調査の会社は多数あるが、海外専業はユニーク。「求人はしょっちゅう出るものではないですが、優秀な人、熱意がある人が歓迎されます。自分から売り込むようなチャレンジ精神も買われると思いますよ」
取材協力 WIPジャパン株式会社
隠善さんのある1日のスケジュール 9:00 出社、メールと全社員の日報ダイジェストを確認 |
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