海外情報収集・海外マーケティングの1click WORLD MARKETING
home research web usability    
marketing useful info about us topics  
お見積・お問合わせ 
 
 
 

「海外調査」外注コストを安く抑える6つの方法

海外情報収集ヒント集

海外検索エンジンひとくち講座

関連書籍など

国際電話番号一覧

大使館領事館リスト

国際事業関連団体

 

マーケティングリサーチ関連ブックリストNew!

グループ・インタビューの技法

S・ヴォーン他 慶応義塾大学出版会 2002(1999)


目次
第1章 フォーカス・グループ・インタビューとは何か
概観/重要概念/課題
フォーカス・グループ・インタビューの背景
歴史的な概観
定義
ビジネス、マーケティング、コミュニケーション、健康科学における適用

第2章 なぜ教育・心理学研究でフォーカス・グループ・インタビューを適用するのか
概観/重要概念/課題
第1の理由:フォーカス・グループ・インタビューの多様性と有用性
第2の理由:質的研究パラダイムとの適合性
第3の理由:参加者との直接的な接触機会
第4の理由:データ収集における優位性
第5の理由:研究ツールとしての実用性

第3章 教育・心理学研究への応用
概観/重要概念/課題
3つの基本的アプローチ:探索的アプローチ、臨床的アプローチ、現象学的アプローチ
フォーカス・グループ・インタビューの適用について
政策の発展、プログラム、実行への適用:政策、プログラム、実践の企画立案/ニーズ評価/顧客満足と評価
フォーカス・グループ・インタビューに最適な質問

第4章 フォーカス・グループの準備
概観/重要概念/課題
目的の確立:総合調査企画書/調査趣旨の明確化/目標を確認すること
司会者の手引き:導入/ウォーミングアップ/用語の明確化/やさしく威圧的でない質問/答えにくい質問/要約/メンバーの照合/終わりの言葉
フォーカス・グループ・インタビューの数、時間、大きさ及びそのセッティング

第5章 参加者の選定
概観/重要概念/課題
標本抽出計画の開発:有意標本抽出/有意標本抽出に関する考慮
標本抽出のための基準の確立:グループのメンバー構成/性別/年齢/専門家/知り合いでないこと/選抜の手続き
参加者の募集:募集戦略/募集のためのガイドライン
参加者を迎える準備:出席の促進

第6章 司会者の役割
概観/重要概念/課題
フォーカス・グループ・インタビュー内での司会者の役割:フォーカス・グループ・インタビューの計画・立案/導入/討議の開始/くつろげる環境の創造と維持/話題をコントロールする/フォーカス・グループ・インタビューの締めくくり
効果的な司会をすることができるための資質性
司会者の陥りやすい落とし穴
司会者のトレーニング
司会者のアシスタント

第7章 データ分析
概観/重要概念/課題
質的データ分析
参加者とグループの特性記述
データ分析に先立って考慮すること:インタビュー中のメモとメンバーの照合/発言データの記録作成のための手続き/重要な考えを要約する
分析の方法
第1段階:基本的考えを確認する
第2段階:データを単位化する
第3段階:情報単位をカテゴリー化する
第4段階:カテゴリーを取り決める
第5段階:主題を確認し理論を適用する
データ分析のためのコンピュータの利用

第8章 フォーカス・グループ・インタビュー実施手順
概観/重要概念/課題
第1段階:全般的な目的の記述
第2段階:司会者の選定
第3段階:研究目的の精選
第4段階:参加者の選定
第5段階:フォーカス・グループ・インタビューのグループ数の決定
第6段階:フォーカス・グループ・インタビューを行う施設の手配
第7段階:インタビュー手引きの作成
第8段階:フォーカス・グループ・インタビューの実施
第9段階:フォーカス・グループ・インタビューにおけるデータの分析

第9章 青少年に対するフォーカス・グループの適用
概観/重要概念/課題
青少年の対象者を必要とするような教育学や心理学における研究上の問題
フォーカス・グループ・インタビューへの参加者の年齢制限
グループの特徴
青少年に働きかけるときの設備上の考慮点
司会者の手引き:フォーカス・グループの質問とディスカッション
親/養育者の役割
倫理的な考察

第10章 フォーカス・グループ・インタビューの誤用を避けるために
概観/重要概念/課題
フォーカス・グループ・インタビューを実行する前の見えない誤用:適合性/構成/費用/司会者の役割/参加者
フォーカス・グループ・インタビューを実行する際の見えない誤用:雰囲気/参加者と司会者の相互関係
フォーカス・グループ・インタビューを実行した後の見えない誤用:データの分析と解釈/結果の一般化

参考文献
著者索引
訳者による参考文献リスト
訳者あとがき



第1章 フォーカス・グループ・インタビューとは何か

概観
本書の目的:フォーカス・グループ・インタビュー(以下FGIと略記)を教育学および心理学に応用するためのガイドラインを提供すること

重要概念
FGIの父=Merton, Robert K.:アメリカの代表的社会学者、主著『社会理論と社会構造』(みすず書房)。FGIを人々の具体的な状況に対する反応や経験に対する反応を確定するために発展させた。

FGIと他のインタビュー手法との違いは、その「グループ討議」的側面にある

FGIの定義は様々。しかし、いくつかの中核的要素がある

フォーカス・グループ・インタビューの背景
FGIはマーケティングやビジネスにおいては30年以上にわたって、非常に人気のある調査手法である

人気の理由:実施から事実の発見までに要する時間が短い点=ブランド・マネジャーたちにとって非常に迅速に「消費者の認知などを経験する」(Baker,1985)ことができるものと経験的に考えられている
FGIによって豊かな知識が得られる(ibid.)

FGIとは、人々がなぜ、どのように感じ、考え、行動するかを発見するために設計されたもの(Bellenger, Bernhardt and Goldstucker, 1976; Stycos, 1981)

FGIの別名:フォーカスト・グループ・インタビュー;集団深層面接

定義
FGIとは、具体的な状況に即したある特定のトピックについて選ばれた複数の個人によって行われる形式ばらない議論のことである

  • グループとは、ある特定の話題に対して見解を出すことを要請された、ターゲットとなる人たちの形式ばらない集まりである
  • グループの人数は少数で、通常6人から12人のメンバーから成る比較的同質的な人々である
  • よくトレーニングされた司会者が、仮説と質問を準備して、参加者の反応を引き出す
  • FGIの目標は、特定の話題について参加者の理解、感情、受け止め方、考えを引き出すことにある
  • 非常に多数の人々に対して応用できるような量的な情報を生み出すものではない→FGIにおいては合意に至るということは目標とはなりえない。目標は、それぞれの人々の視点を発見し、また人々に異なった視点を表現することを促すことにある:FGIとは、人々の意見を得るためにデザインされるのであって、彼らの意見の強さを正確に測定することを目標としているのではない

FGIの使用
FGIは調査研究の最初の段階においてしばしば用いられる

FGIは、ビジネスやマーケティングにおいてのみ排他的に用いられるものではない:コミュニケーションや医療分野においても一定の評価を得ている

ビジネスにおいては、販売を促進させることを目標にした製品がどのように大衆に見られているかを明らかにするために用いられる

第2章 なぜ教育・心理学研究でフォーカス・グループ・インタビューを適用するのか

重要概念
FGIは、幅広い目的に対して、単独でもあるいは他の方法(質的、量的研究法)と組み合わせても利用できる

FGIは質的研究のパラダイムにおける3つの鍵となる仮説に適合する:・「現実の本質を現象学的なものとみなす」(→FGIの基本的立場に合致);・「調査者と回答者の関係性」(→司会者にはかなりの影響力が付与されている);・「真実の発言は、本質的には、視点によって影響を受ける」(真実は、特定の文脈との関連で、ある一連の問題/考えを記述することによって明らかにされる)(→FGIにおいては、より広範な母集団に一般化し得るような原理もしくは主義を引き出すことが目標とされるのではない。あくまで相互作用的な議論を導くことが目標)

FGIは、集団のダイナミックな相互作用を重視するため、データ収集に新たな局面を提供する:参加者同士の相互作用、他のメンバーによる支援のおかげで、参加者は開放的に反応できるよう促される→グループ構成が、個人の意見を形成することも可能

FGIでは、選ばれた主題について、比較的短時間で多くの具体的な情報が得られる

FGIの基本仮説

  1. 人々は自分自身についての価値ある情報資源である:そのような個人との直接的かつ広範な会話から、多くのことが学ばれ得る
  2. 人々は自分自身の知覚や行動を言語化できる (Lederman, 1990)


FGIの理論的根拠:Byers, Wilcox (1988)
「人々がいかに感じ、何を経験し、何を記憶し、彼らの情緒や動機がどのようなものであり、なぜそのように行動するのかを知りたければ、なぜ彼ら自身に聞かないのか?」

第3章 教育・心理学研究への応用

重要概念
FGIは探索的、臨床的、現象学的アプローチといった研究アプローチに最適である

  • 探索的アプローチ:予備知識が十分でない領域について「前提となる事項」を知ることを目的とするアプローチ。FGIは調べたい情報あるいは関連した予備知識を集め、構成概念を十分に理解し、仮説を立てるのに有効な手段であるから、このアプローチには有効→ターゲットの日常経験の文脈からそれることなく、仮説のための予備知識、調査事項、調査デザインを検証するのにも応用可能
  • 臨床的アプローチ:臨床心理学の方法をヒントとする(→準科学的との批判もある)。データを扱い解釈する個々人の知識や、科学的知識理解の程度によって左右されてしまう
  • 現象学的アプローチ:教育・心理学分野では最も一般的なアプローチ。ある特定のサブグループの日常的知識やものの考え方から得た事柄やトピックを理解することが目標。

調査研究にとって、FGIは仮説や調査方法の開発、調査デザインの修正、一連の結果の解釈などの点で有効な方法である

FGIはプログラムの計画や評価に有効である

FGIは研究の手段として単独でも有効であり、他の研究方法と併用しても有効である

FGIにとって最も適切な研究は、探索的で説明的なものである

FGIにとって最も不適切な質問は、普及させようとか予測しようとするものである

第4章 フォーカス・グループの準備

重要概念
総合調査企画は、調査関係者のすべてのメンバーに合意され、FGIに対する方針を規定するものでなくてはならない

FGIの実行に先立つ2つの目標:・どのように情報が使われるのか、・のぞまれる結果は何か

司会者の手引きにおける重要要素:・導入、・ウォーミング・アップ、・用語の明確化、・やさしく威圧的でない質問、・答えにくい質問項目、・要約、・メンバーの照合、・終わりの言葉

目的や目標は、FGIの数についてのガイドラインとなる

FGIの数は、調査結果のとりまとめとサブ・グループがどの程度結果を代表しているかによって決まる

一つのFGIでは、8人から10人の参加者が理想的な人数
会場のセッティングは、FGIの成功にとって大切な要素。考慮されなくてはならない事柄がある:心地よい会話のための広さ、快適さ、グループ全員が囲めるようなテーブル、等間隔におかれた椅子、記録用の器具の有無、見つけ易いロケーション、安全度、駐車場の有無など

第5章 参加者の選定

重要概念
FGIでは、調査対象者として同質の特徴を持ったグループのメンバーを抽出すべきである

有意標本抽出と無作為標本抽出との違い:有意標本抽出とは、調査者によって選定された回答者が調査計画にどの程度貢献し得るのかという、あらかじめ決められた基準に基づいて、一人ないし複数の回答者を選定する手続きのこと→その第一の目標は一般化それ自体ではなく、その後の研究計画に情報を提供するために主題や話題を十分詳細に理解することにあるので、無作為でなく選定された標本が標準となる

FGIで有意標本抽出を行う際の考慮すべき点:(a)便宜的な標本の使用、(b)一般化、を避けることが重要。(a)が望ましくない理由は、研究の傾向が単に利用しやすく、喜んで参加する回答者に依存してしまうから。また(b)に関しては、そもそも一般化がFGIの目標となることはまれ。FGの標本が無作為抽出であることはほとんどなく、そのデータから母集団を推定することは標本抽出自体に偏りがあるため不可能である。

標本抽出における基準の確立方法:FGIの標本抽出では、回答者の特徴を制限し確定させる「限界」が何であるかを決定する必要がある;(a)必要とされる参加者数、 (b)必要とされる参加者のサブ・グループならびにそのサブ・グループがどの程度適切かつ完璧に研究問題に適しているのか、(c)参加者たちがあまりにも同質で、違った観点が生み出せるかどうか、(d)選抜された参加者たちは、研究目標と照らし合わせてどの程度「信ずるに足る」情報を提供するのか、(e)(一般化は目標ではないが)参加者たちがどの程度一般化を高めるのか。

標本抽出において考慮されるべき論点:「グループのメンバー構成」(参加者の背景、人口統計、社会文化的特徴に関しては、同質の選抜を行うことが推奨される;ただし、同質な追加的FGIを行うことを前提に異質グループで行うことがより効果的となる場合もある)、「性別」(男女間の相互作用が同性、異性グループによって影響を受けるため、調査者にとっては重要な関心事となる。同性、異性によるメンバー構成はそれぞれにメリット/デメリットがある。また、一致性(グループのメンバーが似たような個性、関心、他者を受容する態度等を持っていること)は一般的に異性グループで最も顕著に表れるとされている)、「年齢」(参加者の年齢は、調査上の設問により決定される。年齢が調査の焦点にならない場合には、成人を含んだ広い年齢層で行われることが最もよい)、「専門家」(専門家は調査のためにきちんと選別され、彼らだけのグループを構成しなければならない→他のメンバーを威嚇する可能性があるから。また、彼らの専門家としての立場という背景が、グループの他のメンバーに対して不当に影響を与えないかどうかを、特に考慮する必要がある)、「知り合いでないこと」(参加者は、おそらくもう再び会うことのないまったく見知らぬ人たちと話す場合、より誠実にかつ自由に自分のことを表現する傾向がある;グループの参加者はお互いに見知らぬ人たちであることが望ましい)

標本抽出に続いて行われる募集戦略とそのガイドライン:・組織や企業から購入可能な「会員リスト」を使う(最も望ましい方法)→メリット:無作為に参加者たちを選ぶことが可能、基準に見合った好意的な参加者を適切な人数になるまでリストの人たちに電話をして選ぶことが可能、・基準を満たす多数の個人を含む「ターゲット集団」に接近し、彼らの協力から、可能な参加者の確認と接触を要請する、・望ましい基準を満たし、その基準にあう人々を知っている「個人」への接触、・似たようなFGIから参加者を照会してもらう。

 ガイドライン:・専門的なやり方で選抜し、参加者一人ひとりに彼らの参加が重要かつ価値のあるものであることを気づかせる、・電話をする前に必要なすべての情報が使えるようになっているのかを確認する。参加者の質問を予期し、その答えをあらかじめ用意しておく、・自分自身にとって価値があり、参加者が行うことが自分や他者の手助けになることを告げるようなやりかたで人間関係を構築する。提供された情報は匿名のままだが、一人ひとりの参加が究極的には自分個人の手助けとなり、広い意味では社会の研究に役立つことを特に明記する、・参加者にとってもその時間が価値あるものとなり、FGIを終えた際には、彼らが行ったことが価値のあるものであったと感じさせること。インタビューが価値のあるものであったことを誠実かつ明確にフィードバックし、どの程度調査計画の手助けになったかを知らせることが必要

 ガイドラインの例:

  • FGIの前に手紙でインタビューの行われる時間と場所と参加者の役割が重要であることを参加者に知らせる。日時については電話で確認を取る
  • 参加者にはあらかじめ、FGI終了時点で謝礼、もしくは謝品が提供されることを知らせておく
  • 食べ物や飲み物(アルコール飲料を除く)を用意すると参加が促される。かつ、FGIの成功には欠かせないものである
  • 参加者にはあらかじめ、遅れてきた場合にはグループを乱すので参加できない趣旨を伝えておく
  • FGIに参加したことを証明するものを、インタビューの終了時点で提供できるようにしておく



参加者にFGIへの出席準備をさせるための手続き:参加者に調査の目的が何であるか(=調査のための討論であること)および調査テーマの大枠を知らせる(「調査協力依頼書の例 5.4」参照のこと)→出席を促す(参加者すべてに平等となる日時の設定、飲食物・スナック・飲み物は相互作用を促進する雰囲気づくりに必要、謝礼(参加者の給与と関係:20ドル〜100ドル、十分な謝礼が支払われるべき)→

第6章 司会者の役割

FGI内での司会者の役割:「FGI計画・立案」(参加者のディスカッションを誘導できるのは司会者だけ。したがって司会者はどのような情報がその調査関係者にとって有効なのかをFGI開始前に十分知っておかなくてはならない)、「導入」(司会者は参加者と顔をあわせる唯一のスタッフ。参加者に挨拶をし、自己紹介をするが、その際に博士や社長等の職業上の肩書きは使うべきではない→司会者は参加者と対等であることの表明であり、また参加者の発言に不適当な影響を与えるのを抑えるのに役立つ)、「討議の開始」(司会者は性別・年齢などの人口学的な情報をまず入手する。参加者の名札に間違いがないことを確認する。なお、討議中は名前で呼び合うことが重要→全員の間に対等の関係が生まれる。また参加者一人ひとり紹介し、飲み物を勧め、トイレの場所を教えたり、特別な約束事(喫煙できるかどうかなど)について参加者に知らせる。それと同時にインタビューの開始に向けて、参加者を落ち着かせることを心がける)、「くつろげる環境の創造と維持」(司会者は参加者の快適性を最大にし、その場が親しみやすく、あら捜しの場でないという環境を作り上げる。そのために参加者の到着前に会場に食べ物が用意され、配置されていることを確認するのも司会者の重要な役割となる。また司会者はことばづかいに気をつけ、参加者が気分よく、立場を守られながら自分の本音を話していると思えるように気を配る必要がある)、「話題をコントロールする」(司会者はFGIの枠の中で必要な情報を得なければならない。いきなり特定分野の質問をするのではなく、より一般的な質問からはじめることが望ましい。司会者は参加者の反応に対して純粋に興味を示していることを伝え、質問がテストや査定のように受け取られないようにすることが重要。また参加者の相互作用が始まってからは、確認のための質問が必要になってくる→前の発言を発展させるのに必要であり、またそれによって反応がより特定化され、十分な意味が明らかになることに役立つ。逆に、曖昧なことについては慎重でなくてはならない。しかし、回答する人を誘導したり、脅迫的・攻撃的に受け取られないようにすることが重要。(a)必要としている情報が得られているか? (b)関心を持つ問題を取り扱っているか? (c)グループのメンバー全員を気楽にさせて、メンバーの相互関係を作り出せているか?を絶えず自問する)、「フォーカス・グループ・インタビューの締めくくり」(司会者は決められた終了時間内にディスカッションを終わらせることが重要。終了時、FGIで表明された主要なポイントを要約したり、特定の問題について最後の意見を求めたり、フォーカス・グループ全般についての最後の考えを語ってもらったりすることもある)

効果的な司会をすることができるための資質性:司会者は調査のテーマを完全に理解していなくてはならないが、その分野の専門家でなくても構わない。FGIの目的は、結局のところ参加者からの意見を収集することにある。理想的な司会者とは、しっかりと参加者を管理し、それでいて親しみ易い人である。さらによい聞き手であり、参加者の反応に真摯な関心を持つ人である。また今後どのように応答し、深く調べるか、過去の反応を関連付けて考えられるようなすぐれた記憶力も必要である。さらに司会者には、鍵となるような洞察結果をベースに最終的に報告を取りまとめていく力が求められている。

司会者の資質/技術

  • テーマについて知る:しかし、よく知っているように振る舞ってはならない
  • 参加者自身の知覚や態度における不完全な理解を本質的にあきらかにする
  • グループを統制し、リーダーの役割をこなしながら、気さくで親しみ易い雰囲気を維持する
  • 遂行するというのではなく、促進する機能を果たす
  • 十分に記憶を働かせ、参加者の発言を思い出し、後の回答や確認と関連付ける
  • 積極的にかつ受容的に聞く
  • 参加者によく反応する
  • メンバーの感情的な発言や論争点に注意を払って反応する
  • グループのどんなメンバーも阻害しない
  • 恥ずかしがり屋や消極的な参加者からの意見を誘い出し、メンバー内の優劣性をなくす
  • インタビューにおいて一体感をつくりだし、興味を持ち積極的な参加者を維持するために他の参加者の発言を促す
  • 重要なアイデアを記録するために、また要約、報告書、解釈を書くために、すぐれた文章作成能力を身につける


司会者の陥りやすい落とし穴:参加者すべての回答を同等に評価・分析し、正確に反映させるために、司会者はFGIのトピックに関して偏見や先入観を持たせないようにして参加しなくてはならない。人種、性、社会階級に基づく偏見を司会者自身持たないこと。FGIの結果によって利益を得たり、特定の結果を支援するような個人的な見解を持つ司会者は不適格:外部の司会者を連れてくることが理想的。

有能な司会者をリクルートするための質問例

  • 教育学、心理学そしてコミュニケーション学において、どんな訓練をしてきたか
  • グループを扱うことについて、どんな訓練をしてきたか
  • FGIにおいて、あなたはどんな技法をつかいますか
  • FGIで、あなたは何か特別な体験をしたことがありますか
  • この研究プロジェクトのような分野でかつて仕事をしたことがありますか
  • これらのFGIを効果的に行うために、何か私に聞きたいことはありませんか
  • 前もってどんな準備をしますか
  • あなたの司会者の手引きにはどのようなことが書かれていますか
  • このFGIの研究プロジェクトにおいて、司会者としての役割はどのようなものだと考えますか

司会者の思わぬ落とし穴

  • 司会者や調査者の好みが参加者にはっきりとわかるような、あまりにも多くの情報を与えすぎること
  • グループが方向性を見失ってしまうほどに、司会者があまりに受身でありすぎること
  • 参加者の自発性や純粋な反応を抑制するような、過度の統制を行うこと
  • 不平等な形で参加者の発言を促進すること
  • ある特定の何人かに特別の注意を払うこと
  • 純粋な反応ではなく、司会者を喜ばせようとしている参加者を取り上げすぎること
  • 参加者の反応が幾通りかの方法で解釈されうるとき、厳密に聞き出さないこと
  • 司会者自身の癖が、すべての参加者の自由な参加を抑制するかもしれないということを認識していないこと
  • FGIの成功をグループの相互作用の質でなく量で判断すること


司会者のトレーニング:FGIを観察し、練習する→(a) 実際に熟練の司会者によって行われたFGIを直接見たり、そのビデオを見る、(b) 以前に行われたFGIの録音テープを聞くこと、(c) 実際のFGIの発言記録を読む、(d) インフォーマルなFGIのセッションを司会してみる、(e) 司会者の手引きを入手し、読む
司会者のアシスタントの役割:

  • インタビューを行う部屋の準備
  • 参加者、司会者、アシスタントの席の配置
  • 部屋の温度や明るさのチェックと調整
  • 飲み物などの用意
  • 記録用のテープ、ビデオの設置やテスト
  • 司会者の指示を受けられるところでの待機
  • FGIが行われている間の器具の操作
  • メモとり
  • 後片付け

第7章 データ分析

質的データ分析:FGIから得られた大量のデータをどのように要約あるいは整理するかについての情報は、実はあまり多くない。

質的方法論の適用に関する概観や理論的根拠を示した資料

  • Bogdan and Biklen, 1992 ; Glesne and Pshkin, 1992 ; Patton, 1990

質的研究による信頼性と妥当性の形式を解説した資料

  • Maxwell, 1992 ; Yin, 1989

参加者とグループの特性記述:FGIの結果を解釈し要約することは、実は大方の量的調査において適用されている方法論と多くの点で類似している→参加者の抽出方法やコンタクトの取り方、コンタクトを取った対象者の人数、結果的に参加した者の割合など、有意標本抽出のために確立された基準に適合する。こうしたデータは質的分析にも不可欠な要素と考えるべき

データ分析に先立って考慮すること:(a) インタビュー中のメモとメンバーの照合(参加者の言語的ならびに非言語的反応についての広範なメモ、特に皮肉や怒りといった情動データの強度を確認できるようにしておくことが重要)、(b) 発言データの記録作成のための手続き(誰が、どれだけの細部を記録するか:理想的なのは、分析に責任を持つ主たる調査者がデータ分析に先立ってFGIに参加し、発言記録には反映しないが問題の発見には関連のある言語的/非言語的メッセージのメモを取る)、(c) 重要な考えを要約する(・基本的考え=参加者の身体言語や発言、反応に伴う情緒的水準、発言の強さ、特定の問題での集中度の高いもの:調査者に求められているのは語られた回数ではなく、結果のパターンを見出すことである、・発言の選択と意味=参加者が意図した意味だけでなく、参加者がどのような言葉を選んだかについても考えてみる、・文脈を考える=他人の発言やFGIの状況によって、どの程度まで参加者の意見が影響されたかを考える;個人インタビューであれば同じ意見が聞けただろうか?、・反応の一貫性を考える=参加者の反応は一貫しているのか、それとも参加者は立場を変えるのだろうか。変えるとしたらどのような条件(刺激)のもとでか。

分析の方法
第1段階:基本的考えを確認する:発言主題がどの程度情緒的なものであるか、少数の参加者にとって重要なのか、それともすべて参加者にとって重要なのかについて認識したうえで区別し、初期の枠組みとする(単位分析の最後に再度検討する)
      ↓
第2段階:データを単位化する:情報単位の大きさは成句から文や段落までさまざま。FGIの参加者からの直接引用を随時含める。情報単位はそれ自体で有益であるものでなくてはならない。情報単位は発見的なものであり、調査者がテーマや調査課題をより深く理解できるように指向されたものでなくてはならない(調査課題をよりよく満たすという基準に合致してなければ、どれほど興味深い情報であっても不適切となる)
      ↓
第3段階:情報単位をカテゴリー化する:第2段階で確認された単位を分類する。カテゴリーとは、データの単位群に、組織化されたテーマを与えるすぐれた見出しのこと。また、この過程の途中でカテゴリー特性を記述する規則が定義されていくことになる。→索引カードの利用も可能
      ↓
第4段階:カテゴリーを取り決める:第1〜3段階はデータ分析者が単独で行う作業であるのに対し、この段階では複数の分析者で行う。複数の分析者はそれぞれのカテゴリーを持ち寄り、情報単位の包括のための規則や基準、ならびに分類結果に関する類似点と相違点について徹底的に比較検討を行う。調査課題との合致性の観点から、情報単位の分類(カテゴライズ)に一貫性が得られるまで行う。
      ↓
第5段階:主題を確認し理論を適用する:情報単位とカテゴリーに関する作業の結果から、基本的考えをまとめ直す→基本的考えの熟慮と「主題」の抽出。調査者の役割は、主題を確認し、カテゴリーがこれらの主題をどの程度支持しているのかを測定することである。
データ分析のためのコンピュータの利用:・FGIのデータの発言記録と校正における言語処理が不可欠な段階での利用、・データの組織化、および主題を確認する際の機械的部分での利用。ただし、結果の解釈や意義ある主題の確認、また情緒的表現に関する解釈はコンピュータにはできないので、注意が必要。なお、質的データ分析のソフトウェアのリストはp.148を参照のこと。

 


Copyright(c) 2003, WIP Japan Corporation. All rights reserved.
Reproduction without prior permission prohibited.

 

| ホーム | 海外調査 | WEBユーザビリティ | 海外マーケティング | お役立ち情報室 | グループ概要 | トピックス |